今回は少し上級志向で、多くの元気のある麺ビジネス経営者が陥っている多店舗経営に移る場合の問題点です。
尚、多店舗展開だけでなく、地域一番店の単独店舗づくりの参考にもなる内容になっています。
麺ビジネス経営で、1店舗経営、或いは、2~3店舗経営では素晴らしい成果を上げても、
それより多い多店舗経営に入った途端にごくありふれた普通の店になる原因をあなたはご存じですか。
先週、私は東京支店でのラーメン学校に参加し、最終日の土曜日の朝は、2回目の経営講義の時間でした。
今回の生徒さんは、国内が4名、海外から4名で、パリ、深圳、カリフォルニア、ワシントンと世界中からの参加でした。
海外の生徒さんの中には、既に、数店舗の飲食店の展開をしている人たちもいて、売上高も1~2億円のレベルから、
10億円以上のレベルを目指している生徒さんたちもいました。
そのために、今回のテーマである多店舗展開に入る場合の課題が話題になったのです。
私は48年間、会社経営をして来て、常に、規模拡大時に陥る問題を経験してきているので、皆さんの問題点もよく分るのです。
当社は、48年前にはゼロからのスタートで、少しづつ売上を拡大し、現在は年間売上が、20数億円規模になっています。
以下は、私の失敗談を含めて、規模を拡大する際の問題点について、触れていきたいと思います。
特に、当社の学校の卒業生、或いはユーザーさまも、今後、多店舗展開を目指す元気のある人たちが相当数、いらっしゃいます。
私の多くの失敗が、麺ビジネスでの成功を目指すあなた方のお役に立つことを目指して、書き進めていきます。
アフターコロナの厳しい時代において、私が麺ビジネスの拡大成長に関しての10個の問題点は以下の通りです。
1店舗だけの経営には飽き足らず、多店舗展開を目指す経営者の方々は、皆さん熱い情熱と素晴らしい能力をお持ちの方々です。
だから、最初の店舗を繁盛店にすることが出来、それだけでは飽き足らずに、多店舗展開を目指しているのです。
その前に、多店舗展開を目指す多くの経営者の方々が陥っている大きな問題点があるのです。
それは、規模の小さい店舗を多店舗展開しようとする経営者があまりにも多いということです。
私は以前から、家業でやるのであれば、月商の大きさは500万円以下であっても、何ら問題ないのですが、
人を採用して事業(ビジネス)として多店舗展開を目指すのであれば、最低月商は500万円以上です。
出来れば、月商1千万円以上で、月間利益は200~300万円は目指すべきだと思っています。
この数字は、長年当社のユーザーさまの盛衰を見続けた中での経験則です。
そして、多店舗展開に踏み込む前に大切なことは、最初に成功する(利益のシッカリ出る)ビジネスモデルを作り上げることです。
成功するビジネスモデルを上手に作り上げた事例は、丸亀製麺の粟田社長とか、ラーメンでは博多一風堂、そして来来亭等々、
業界での成功組は、まず、最初にシッカリと利益の出るビジネスモデルを1店舗、作り上げているのです。
手慣れた経営者でも、最初のビジネスモデル作りにかなり時間をかけて、1店舗を作り上げ、その後、多店舗展開を始めています。
麺ビジネスに情熱を燃やすあなたであれば、これらの成功店を見れば、売上、席数、利益の関係性が分かるはずです。
ビジネスモデルとは、あなたのビジネスの設計図です。
飲食店の場合は、以下の数字を明確化することです。
① 対象客を明確化⇒その結果、立地は郊外型か、都心型かが決まります。
② 客席数
③ 客単価(昼、夜)
④ 客席回転率(昼、夜) ⇒ これは食べログ点数にほぼ比例します。
⑤ 営業時間(昼、夜)
⑥ 月間売上
⑦ 原材料費率、原材料費
⑧ 人件費
⑨ 水道光熱費
⑩ 家賃
⑪ その他経費
⑫ 月間利益
以上の数値のうちで、最も重要なものは、最後の月間営業利益額で、この利益が大きければ大きいほど、
生き残れる確率が高くなり、多店舗展開への先行投資のための原資になるのです。
従って、利益額が非常に重要な点です。
成功するビジネスモデルと非常に関連が深い要素は次の要素が非常に大きいのです。
① 出店場所:例えば、さぬきうどん店を始める場合に、最も競争が厳しく、儲からない場所は香川県です。
反対に最も成功しやすい場所は、海外のうどんを好み、競争がない場所です。
例えば、過去、当社の生徒さんがうどん店で大成功したのは、ポーランドとか、オーストラリアのパースとか、日本人がほとんどいない場所です。
反対にさぬきうどんの本場香川県で、最も成功している外食のビジネスモデルは『骨付鶏 一鶴』で、うどんではないのです。
② 経営者の麺ビジネスにかける情熱:私は創業したころの丸亀製麺の粟田社長を良く知っています。
うどん店ビジネスにかける情熱は、他の大きな上場企業の経営者にも負けない凄まじい情熱を持っておられました。
マクドナルド創業者のレイ・クロックの伝記(成功はごみ箱の中に)を読んでも、ひしひしと感じます。
ナイキを世界一のスポーツ用品メーカーにしたフィル・ナイトも全く同じです。
ナイキの創業者フイル・ナイトは飲食ビジネスを始める人たちに次のように助言しています。
〈よく「レストランを開きたい」と言う人がいる。しかり、レストランの厨房で1日23時間働く覚悟がなければ、また、稼ぎがまったくなくても「この仕事が本当に好きだから」と言えるようでなければ、やめたほうがいい〉
③ 他店のコピーではない独自性の尖った特徴のあるビジネスモデル:丸亀製麺のビジネスモデルの大きな特徴は、各店舗の店頭に製麺機を設置して、小麦粉を練るところから始める実演自家製麺です。
これは、多くのうどん店経営者は過去、最もやりたくなかったビジネスモデルなのです。
あまりにもリスクが高かったのです。
全店への製麺機の投資コスト、全店で年中、品質を均一に安定させる仕組み作りの大変さ、人の確保、人の育成の難しさ等々、他の一般的な経営者であれば、絶対にやらないであろう、難しいことのリスクを取って、果敢にやり遂げたのです。
④ 席数の大切さ:国内でも、席数、駐車場台数は、ビジネスモデルにとって、重要なファクターですが、海外での麺ビジネスでは、席数が更に重要になります。
その理由は、日本人のわれわれと、海外のお客さまでは、食事の速さが全く異なるのです。
例えば、ランチで、日本では1時間で3回転もしますが、海外ではせいぜい1回転なのです。
従って、博多一風堂も国内では40席が平均でも、海外ではその2倍以上もある店舗がほとんどなのです。
⑤ 客単価の大切さ:多くの経営者が価格設定で弱気になり、間違った価格設定をしています。
利益が最大になる価格設定が出来ていないのです。
価格設定で、国内で大成功した事例はスターバックスです。
常にドトールの1.5倍の価格設定なので、出る利益は何倍にもなったので、出店スピードが非常に早まったのです。
⑥ 原材料費率の大切さ:過去のうどん店ビジネスの常識は、原材料費率が20~30%程度で、儲かり易いビジネスだったのですが、これを大きく覆して、価格革命を起こしたのが、はなまるの出現でした。
かけ1杯100円が登場し、それまでのうどん蕎麦店の価格の常識を破壊してしまったのです。
現在の国内の外食産業の平均値は40%超えなので、この程度はコストをかけないと、お客さまの満足するような料理は難しいのです。
はなまると丸亀製麺の出現が、国内のうどん蕎麦店の市場を大きく変え、うどん蕎麦店市場における寡占化が始まったのです。