連載全2回のうち第2回目
作成:讃匠 麺研究センター
前回「A. お客さまに喜んで頂いて、価格を上げるにはどうすれば良いか」からの続きです。
最初に上記の生徒さんが検討していたのが、上記の通常価格で豪州$25で、2500円程度だったのです。
日本人のわれわれから見れば、既にこの価格はとんでもなく、高いと思うかも知れませんが、豪州の通常価格です。
私が提示した一段上の価格は、お客さまの潜在ニーズを満たした価格設定なのです。
分かり易い事例で言えば、カフェのドトールとスタバの価格差は、スタバがドトールの1.5倍です。
ところが、どちらがお客さまの数が多いかと言えば、はるかにスタバの方がはるかに多いのです。
従って、価格の高い安いがお客さまに取って価値があるのではなく、スタバの方が、 お客さまの潜在価値を満たしていると言えるのです。
そして、ドトールは男性のサラリーマンがメインの客筋ですが、スターバックスはそうではなく、女性がメインです。
そして、スターバックスは、お客さまに第3の場所を提供して、お客さまの潜在ニーズに応えているのです。
コーヒーを飲みながら、PCで仕事をしたいとか、本を読みたいとか、友達との楽しい時間を過ごしたいとか、 さまざまな潜在ニーズに応えているのです。
私もスターバックスをよく利用しましたが、コーヒーを飲むために利用していたではなく、 思考に集中出来る静かな場所が欲しかったのです。
従って、スターバックスはお客さまの顕在価値はすべて満たし、潜在価値の願望価値までを満たしていると言えるのです。
しかし、このような潜在ニーズは上記の願望価値を満たしている浅い潜在ニーズで、 もっと深いところにある予想外価値を満たしている潜在ニーズを掘り当てれば、 ビジネスは、もっと加速することでしょう。
私が良く知っている予想外価値を満たしている事例は、デイズニーランドです。
デイズニーランドでお土産のクッキーを購入した福岡のお客さまが、自宅に帰ってクッキーの缶を見てみると、 缶が凹んでいたので、デイズニーランドに電話をしたそうです。
すると、デイズニーランドの担当者は、丁寧なお詫びして、交換させて頂きますと言って、 福岡までわざわざ現品を持って来てくれたそうです。
これは、期待、願望をはるかに超えた予想外価値なのです。
ルイビトン等のバッグ、或いはフェラーリを買うような人は、それぞれの機能性、例えば、フェラーリの場合は、 その持っている性能を最大限に引き出し、高速道路をぶっ飛ばすために買う人は、ほとんどいないと思います。
持つこと自体がステータスになり、フェラーリを持つことによる精神的な満足のために買っているのではと思います。
このように、深い潜在ニーズを満足させることが出来れば、出来るほどに、高い付加価値を得ることが出来るのです。
それには、基本的な性能、品質の良さは絶対です。
先ほどのオーストラリアのうどんの事例で言えば、女性客を呼ぼうとしているのであれば、 女性が潜在的に求めているものに、フォーカスするのです。
女性の場合は、まず、美しく見られたいという潜在的な願望があります。
それを食の分野で満たそうとすると考えられるのは、美肌に良い食材、トマト、卵、うなぎ、納豆、胸肉、 サバ等の食材を上手に、食べやすく、見た目もきれいに、麺とのバランスを考えて調理することなのです。
そして、お客さまに当店の料理は、美肌効果、アンチエージング、骨粗鬆予防、更年期対策、痴ほう症対策等々、 さまざまな健康効果が得られる食材を採用していることをアピールすることも方法です。
最近の消費者でも美容とか健康に関する意識レベルの高い人、例えば医者等は、このような情報をたくさん持っています。
薬とか、サプリメントでの美肌、健康を目指すのではなく、意識レベルの高いレストランであることを理解して貰うのです。
私は、以前から社内の食堂をオーガニック食堂にして、食は人々を健康にするための重要な手段として、 実践してきました。
以上のことより、お客さまのニーズを正確に理解すればするほど、われわれのビジネスは大成功すると言えるのです。
当社のメインビジネスの製麺機の場合でも、製麺機を使うお客さまも潜在ニーズを正しく理解すればするほど、 当社のビジネスは大成功するのです。
例えば、当社の製麺機を購入するお客さまが製麺機に求める基本価値は、機械が故障せずに、 誰でも簡単に美味しい麺を作れることとします。
次に、期待価値としては、どこにも負けない美味しい麺が楽に作れて、美味しい麺の力で繁盛することとします。
それでは、浅い潜在価値の願望価値として、どこにも負けない美味しい麺の力で、地域一番店になれることとします。
最後の深い潜在価値の予想外価値としては、製麺機で自家製麺することにより、 従業員のレベルが上がり続けることが出来るとすれば、どうでしょうか。
実際にこれを実現出来ているのが、セルフうどんの最大手丸亀製麺なのです。
予想外価値は、期待もしていなかった価値であり、丸亀製麺の担当者の人たちでさえ、恐らく気づいていない価値です。
このように、高い付加価値を理解し続けることはビジネスを加速させる結果となります。
次に、お客さまのニーズを確実に理解する方法として、過去、さまざまな手法が取られてきましたが、 最初に顕在ニーズを理解して、次に潜在ニーズを理解する順序が大切です。
そのような中で、最初に大切なことはわれわれが理解しているお客さまの顕在ニーズと、 お客さまが感じている実際の顕在ニーズとの認識のずれを無くすることです。
そのためには、お客さまの顕在ニーズを明確にして、完全に認識のずれなく理解することです。
お客様の顕在ニーズの1つひとつに関して「具体的に何がわかっている」「なぜそれが重要かわかっている」 次に、「すべてのニーズがわかっている」「それらの優先順位がわかっている」ことです。
最後に、お客様がイメージしているニーズの絵と「まったく同じ絵を描ける」ことです。
これらの理解は、お客さまへの質問を丁寧に続けることによってはじめて可能になります。
ニーズの理解の部分でよく間違えられるのは、ニーズとウオンツとの違いです。
ニーズが”目的”であるのに対し、ウォンツは”手段”を意味します。
先ほどの「〇〇が欲しい」がまさに「ウォンツ」であり、 顧客の最初の要望は「ニーズ」ではなくこの「ウォンツ」である場合が多いです。
例えば、ある男性が昼食を取ろうとしているとします。
その場合、昼食を取るときの「昼食を食べたい」という動機が「ウォンツ」となり、 「美容のためにとか、体重を減らしたい、健康になりたい」などという昼食を取る目的が「ニーズ」となるのです。
顧客のニーズが「健康になりたい」にも関わらず、「昼食を取りたい=ニーズ」と捉えてしまうと、 健康に良くない昼食など、ニーズと合わない料理を紹介してしまう恐れが考えられるでしょう。
これでは、顧客のニーズを満たすどころか、さらに理想からかけ離れてしまい、満足度は低下してしまうはずです。
一方、ニーズが「健康に良い」ことだとちゃんと掴めていれば、健康によい食事を提供している店の紹介等、 顧客が望む商品を紹介することができます。
これらを事例で説明していきます。
うどんの場合で言えば、うどんを料理としてみると、うどんの特徴は麺の食感、次に出汁の味、両者のバランス、 トッピングの良さ、盛付の素晴らしさ、提供の方法、店内サービス、店内雰囲気、店内の内装のレベル、清潔さ、 等々、お客さまごとにこれらのニーズは異なります。
同時に、ニーズの優先順序も異なります。
あるお客さまは、商品のレベルよりもサービスレベルを優先されます。
或いは、あるお客さまは清潔さのレベルが非常に要求されます。
従って、あなたが狙っているお客さまの真の顕在ニーズは何か、 更にその顕在ニーズの優先順序はどうか等を正確に理解することです。
そして、顕在ニーズが理解出来れば、次は顕在ニーズを掘り下げることです。
これは、お客さまでも気づいていないので、質問では回答は得られないのです。 潜在ニーズを見つける方法は、お客さまの観察で、常にどんな料理をオーダーしているのかを見れば、 お客さまの潜在ニーズが見えてきます。
注文する料理の裏に隠れている潜在ニーズは何か、何のためにその料理を注文しているのかを読み取るのです。
これから、われわれのビジネスを大成功させるためには、お客さまの潜在ニーズを探る旅に出ることをお勧めします。 当然、当社もお客さまの潜在ニーズを探る旅を永遠に続けたいと思います。