連載全2回のうち第2回目
作成:讃匠 麺研究センター
自家製麺は、人を育てる教育ツールだった
製麺機が麺ビジネスにイノベーションを起こした
ラーメンの歴史でも触れているように、永い歴史を持つ中国のラーメンではなく、 日本のラーメンが世界中に広がる原因になったのは日本のラーメンに2つのイノベーションが起きたのが原因です。
1つが元だれの発明、もう1つが製麺機の発明です。
テクノロジーが生まれたのです。
テクノロジーとは、人間の機能の拡張と言われておりますが、 そもそもテクノロジーとは何のために生まれたのでしょうか?
石器にはじまりインターネットに至るまで、すべてのテクノロジーは、 何らかの形で人間の持つ機能を拡張してきました。
斧や弓が、手の持つ機能をそのまま拡張したものだというのはイメージしやすいでしょう。
文字や書籍は、かつて個体の脳内で完結していた情報を物体に記録し、 他の個体にも共有可能にしたという意味では、人類の頭脳の拡張だといえます。
テクノロジーは常に、人間の能力を拡張し、一個体だけではできないことを実現可能にしてきました。
テクノロジーの規模が大きくなり、そのメカニズムが複雑になるにつれ、 何を拡張しているのかは実感しづらくなりますが、その本質は変わりません。
蒸気や電力は人間の手足の動力そのものを何万倍にまで拡張させたテクノロジーです。
蒸気機関車をもし人力で動かそうとすれば、どれくらいの人が必要になるかは、想像すらできません。
同様に、掃除機や洗濯機ひとつとっても、電力ゼロで、 人間の動力だけに頼るなら、私たちの生活は成り立ちません。
一方で、コンピュータやインターネットは、 電力や蒸気とは根本的にまったく違う方向に人間の機能を拡張するテクノロジーです。
その本質は、「知性の拡張」にあります。
コンピュータが発明されたことによって、人類は個体の脳をはるかに超える計算能力を手に入れ、 インターネットによってリアルタイムで、他人とコミュニケーションがとれるようになりました。
蒸気や電力といったテクノロジーが現実世界における「動力革命」だとすれば、 コンピュータは脳内における「知性革命」ということができるでしょう。
従って、これからの製麺機の役割は、人間の持つスキルの拡張だけでなく、 知性の拡張の方向性があります。
要するに、日本の製麺機の発明が、日本の麺業界にイノベーションを起こし、 日本のラーメンがグローバル化に成功したということです。
うどん店ビジネスは、手打ち式製麺機の発明、進化が、日本のうどん業界の進化とグローバル化を推し進めています。
例えば、丸亀製麺の場合は、真打1台でプロの職人の7人分の仕事をこなしています。
蕎麦店ビジネスは、手打ちのプロしか出来ませんでしたが、十割蕎麦を機械で作れるようにしました。
食ビジネスの進化発展は、それを支えるハードウエアの進化が支えています。
手作りと変わらない美味しさと生産性の向上を目指しています。
これらが麺ビジネスにおける製麺機の役割といえるでしょう。
もし、製麺機が存在しなかったら、日本のラーメンはグローバルフードになってなかったかもしれません。
最近、麺学校の経営講義に参加していると、多くの生徒さんからの要望の1つが、 人材を育成する方法を教えて欲しいという希望が非常に多いのです。
多くの麺ビジネスのオーナーは、人材育成で非常に困っている事例が多いのです。
実は、私は製麺機ビジネスを通して、面白い発見をしたのです。
それは、製麺機は人を育てるということです。
製麺機は人材育成マシンだということです。
うどん、蕎麦、ラーメンに共通して言えることは、材料は非常に単純ですが、製法は非常に複雑なのです。
この3種類の麺類のうち、最も材料が単純なのが、うどん、次が蕎麦、最後がラーメンです。
最近ではラーメンの小麦粉のブレンドに、非常に複雑にブレンドしてこだわる人が増えているのです。
うどん、蕎麦、ラーメンの材料と製法の複雑性の関係性は以下の通りです。
うどん、蕎麦、ラーメンの材料と製法の関係
うどん | 蕎 麦 | ラーメン | |
---|---|---|---|
材料 | 単純 | 中間 | 複雑 |
製法 | 複雑 | 中間 | 単純 |