うどんの画像

連載全2回のうち第2回目

作成:讃匠 麺研究センター

麺ビジネスは自家製麺の方が何故、成功しやすいのか?

目次

自家製麺は、人を育てる教育ツールだった

3.麺ビジネスの可能性は製麺機が創り出した

製麺機が麺ビジネスにイノベーションを起こした

ラーメンの歴史でも触れているように、永い歴史を持つ中国のラーメンではなく、 日本のラーメンが世界中に広がる原因になったのは日本のラーメンに2つのイノベーションが起きたのが原因です。

1つが元だれの発明、もう1つが製麺機の発明です。
テクノロジーが生まれたのです。
テクノロジーとは、人間の機能の拡張と言われておりますが、 そもそもテクノロジーとは何のために生まれたのでしょうか?
石器にはじまりインターネットに至るまで、すべてのテクノロジーは、 何らかの形で人間の持つ機能を拡張してきました。
斧や弓が、手の持つ機能をそのまま拡張したものだというのはイメージしやすいでしょう。
文字や書籍は、かつて個体の脳内で完結していた情報を物体に記録し、 他の個体にも共有可能にしたという意味では、人類の頭脳の拡張だといえます。

テクノロジーは常に、人間の能力を拡張し、一個体だけではできないことを実現可能にしてきました。
テクノロジーの規模が大きくなり、そのメカニズムが複雑になるにつれ、 何を拡張しているのかは実感しづらくなりますが、その本質は変わりません。
蒸気や電力は人間の手足の動力そのものを何万倍にまで拡張させたテクノロジーです。
蒸気機関車をもし人力で動かそうとすれば、どれくらいの人が必要になるかは、想像すらできません。
同様に、掃除機や洗濯機ひとつとっても、電力ゼロで、 人間の動力だけに頼るなら、私たちの生活は成り立ちません。
一方で、コンピュータやインターネットは、 電力や蒸気とは根本的にまったく違う方向に人間の機能を拡張するテクノロジーです。
その本質は、「知性の拡張」にあります。
コンピュータが発明されたことによって、人類は個体の脳をはるかに超える計算能力を手に入れ、 インターネットによってリアルタイムで、他人とコミュニケーションがとれるようになりました。
蒸気や電力といったテクノロジーが現実世界における「動力革命」だとすれば、 コンピュータは脳内における「知性革命」ということができるでしょう。
従って、これからの製麺機の役割は、人間の持つスキルの拡張だけでなく、 知性の拡張の方向性があります。
要するに、日本の製麺機の発明が、日本の麺業界にイノベーションを起こし、 日本のラーメンがグローバル化に成功したということです。
うどん店ビジネスは、手打ち式製麺機の発明、進化が、日本のうどん業界の進化とグローバル化を推し進めています。
例えば、丸亀製麺の場合は、真打1台でプロの職人の7人分の仕事をこなしています。
蕎麦店ビジネスは、手打ちのプロしか出来ませんでしたが、十割蕎麦を機械で作れるようにしました。
食ビジネスの進化発展は、それを支えるハードウエアの進化が支えています。
手作りと変わらない美味しさと生産性の向上を目指しています。
これらが麺ビジネスにおける製麺機の役割といえるでしょう。
もし、製麺機が存在しなかったら、日本のラーメンはグローバルフードになってなかったかもしれません。

4.製麺機の本質は、従業員の教育ツールだった

最近、麺学校の経営講義に参加していると、多くの生徒さんからの要望の1つが、 人材を育成する方法を教えて欲しいという希望が非常に多いのです。
多くの麺ビジネスのオーナーは、人材育成で非常に困っている事例が多いのです。
実は、私は製麺機ビジネスを通して、面白い発見をしたのです。
それは、製麺機は人を育てるということです。
製麺機は人材育成マシンだということです。
うどん、蕎麦、ラーメンに共通して言えることは、材料は非常に単純ですが、製法は非常に複雑なのです。
この3種類の麺類のうち、最も材料が単純なのが、うどん、次が蕎麦、最後がラーメンです。
最近ではラーメンの小麦粉のブレンドに、非常に複雑にブレンドしてこだわる人が増えているのです。
うどん、蕎麦、ラーメンの材料と製法の複雑性の関係性は以下の通りです。

うどん、蕎麦、ラーメンの材料と製法の関係 

以上の様に、材料が単純なほど、製法が複雑で、材料が複雑なほど、 製法が単純ということは、非常に面白い視点です。
但し、ラーメンの製法が単純と書いていますが、うどんに比べればということで、 ラーメンの麺も美味しく作ろうと思えば、決して、単純ではないのです。
あくまでも、上記のことは、他と比較すればということです。
人材育成マシンに気づいたのは、 うどん業界でトップに上り詰めた丸亀製麺を見ていて気付いたのです。
丸亀製麺では全店で、製麺機を店頭に置いて、実演自家製麺で大成功したビジネスモデルです。
国内だけでも800店以上展開しているうどん業界のガリバーです。
このような大規模チェーン店で、店頭で製麺機を全店に設置して、 実演自家製麺を行なうという発想は、過去の外食経営者はまったく考えなかったアイデアだったのです。
外食企業の常識では、チェーン理論という概念があり、多店舗展開の場合、店内作業を出来るだけ軽くして、 誰でも均一な作業が簡単に出来るようにして生産性をあげるというのが、過去の基本的な考え方だったのです。
ところが、丸亀製麺はそのようなチェーン理論とは反対に全店で複雑な自家製麺を始めたのです。
その結果、セルフうどん店業界で先行していたトップ企業を追い抜き、ダントツのトップに躍り出たのです。
先行して企業は、全店に製麺機を置かないで、 セントラルキッチンからの麺配送で、店舗では茹でるだけなので、 はるかに店内で働いている従業員の負荷が少ないのです。
ところが丸亀製麺は、店内で小麦粉から練るので、従業員の負荷は大きいだけでなく、 日本は四季があり、春夏秋冬の気温差も大きく、麺作りも気候に合わせて、 加水も都度変える必要があり、単なる作業ではなく、考える要素が非常に多いのです。
このように、従業員に負荷をかけた結果、従業員は製麺作業を通じて、教育されたのです。
これは、丸亀製麺だけの話ではなく、当社の営業員を見ても、 製麺のプロほど、素晴らしい成果を上げているのです。
更に丸亀製麺は完全なオープンキッチンで、製麺作業がお客さまから見えるのですが、 もし、製麺作業をお客さまに見せないで、バックヤードで製麺すれば、 従業員は常にお客さまには見られないので、成長スピードが全然違うのです。
人の成長は、他の人に見られる方がはるかに速いのです。
丸亀製麺のもう1つの特徴は、実演自家製麺で麺作りの様子を見せながら、 お客さまを楽しませ、教育しているのです。
こんなに手間ひまかけて麺作りをしているということを見せているのです。 普段、うどん作りなど、見るチャンスのお客さまに取って、 製麺作業を見ることは驚きであり、楽しいことなのです。
これからの麺ビジネスだけでなく、どんなビジネスにおいても、 お客さまをハッピーにするビジネスほど成功しており、 ハッピー度が高ければ高いほど、成功度が高くなっています。
その典型事例がアマゾンであり、アップルなのです。
下記は、最近の製麺機の役割の進化で、 製麺機の役割は単なる麺作りだけではないことが非常に良く分かると思います。
製麺機の活用には、こんなにたくさんの意味があったのです。

(成功事例)
丸亀製麺
博多一風堂
タイハチバン

5.まとめ

自家製麺、仕入麺それぞれにメリットとデメリットがありますが、 麺ビジネスの可能性は製麺機が創り出したことが分かります。
そして、製麺機が麺ビジネスにイノベーションを起こし、発展させてきました。
もし、製麺機が存在しなかったら、日本のラーメンはグローバルフードになってなかったかもしれません。
麺の本質は食感の違いで、製麺機の本質は、従業員の教育ツールです。
そして、製麺機が従業員の能力を上げ続けていくでしょう。
そうすると、美味しい麺が作成でき、美味しい麺が従業員を元気にします。
製麺機の本質は食感創造マシンであることが分かります。
最後に皆さんに最もお伝えしたいことは、まず、どの様な麺を自店で提供したいのか、 どの様な差別化をしたいのかという、明確な麺に関するコンセプトが明確であるかどうかです。
まず、自分が想像も出来ないことは実現できないのです。
麺ビジネスの事業コンセプトを明確にして、麺のコンセプトも事業コンセプトと一貫性があり、 それが自分で明確に頭の中で描けているかどうかが大切になってきます。
試行錯誤の結果、偶然に素晴らしいものが得られるというような、奇跡も起きない分けではないのですが、 基本的には、実際の麺を創り出す前に、自分の頭の中に先に得たい麺が出来ているかどうか、 それがまず、一番に皆さんがやらなければいけないことなのです。
当社の場合でも同じです。
開発したい製麺機が明確でないのに、優れた機械が出来るわけはないのです。
尚、最近は、店頭で実演自家製麺を行ない、エンターテイメント性を打ち出して、 大成功している事例が多く見受けられます。
お客様に「できたて」感を訴求し、美味しい麺を扱っているお店のシンボルとして、 パフォーマンス的な能力も求められつつある製麺機。
製麺機は、今後さらにあらゆる機能を要求され、そしてその度に進化を遂げていくことでしょう。
けれども、飲食産業および製麺機がどれほど進化しようとも変わらないことがあります。
それは『“美味しい”とは、お客様の満足度とリピート率を変えるチカラ』であるということ。
なぜ製麺機に美味しい麺を作る能力が1番に要求されるのかというと、 製麺機が実はあなたのお店を繁盛させるための、重要な鍵となる代物だからなのです。
美味しさは、店主を満足させるだけに留まるものではありません。
飲食産業においては、美味しさはお客様を呼び寄せるための最強の武器です。
だからこそ、飲食産業においては、美味の追求が不可欠なのです。
どうぞこれだけは、お忘れにならないで下さい。

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