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連載全6回のうち第4回目

作成:讃匠 麺研究センター

麺ビジネスの成長は、ビジネス・オーナーの成長が必須

3.麺ビジネスの経営者の成長の階段
②極小規模の企業化→個人経営から徐々に企業経営への続きからです。

③  小規模経営へ、価値観、使命、ビジョン、目的、戦略の明確化による社内文化の構築

当社は、今でこそ、年中無休365日のメンテナンスは当たり前になりましたが、
30年前の当社は社員数が30名程度で、始めるのは簡単ではなかったのです。
その頃の私、年中無休365日のメンテナンスを始める前は、会社の電話を枕元に置き、
朝早くからお客さまから、修理の依頼があれば、朝5時からでも車に修理道具を積み、
メンテナンスに走っていました。

30年前ころ、当社の取引先のお客さまに、その頃、
日の出の勢いで伸びていたセブンイレブンの使命は生業支援会社であると教えられました。
それでは、当社の使命は何だろうかと深く考えた結果、製麺機の製造販売会社ではなく、
当社の本当の使命は麺ビジネス繁盛支援会社でなければいけないと気付いたのです。
そして、そのことを社内で、皆を集めて言い続けていると、最初は、
社長は一体、何を言い出したのだろうと、言うような目で、私を見つめていました。

そして、これを言い続けていると、私の中に1つの疑問が浮かんだのです。
当社の使命が麺ビジネス支援会社であれば、
土日、祭日に忙しい麺ビジネスのお客さまへのメンテナンスは土日、祭日こそ重要だと気付いたのです。
そして、年中無休365日のメンテナンスを社員全員に呼び掛けたのですが、
最初は社員全員が反対しました。
反対するだけではなく、何人かは、会社を去っていったのです。
そのような犠牲を伴いましたが、何とか残った社員を説得して、
ようやく、年中無休365日のメンテナンスが産声を上げました。

すると、日曜日に電話をかけてきた困り果てていたお客さまのところに、
当社のメンテナンスが訪問し、機械が修理出来ると、下への置かぬおもてなしを受け、
訪問したメンテナンス担当者も、当社が始めたことは、お客さまの助けになる素晴らしいことだと、
理解してくれ、社内全体が熱心にメンテナンスに取り組んでくれるようになったのです。

その結果、当社はそれまで小型製麺機市場でずっと国内2位だったのですが、
年中無休365日のメンテナンスを始めた結果、国内トップシェアになることが出来たのです。
このことは、当社の社内にカスタマー・サクセスの文化を根付かせてくれたと思います。
この時、同時に始めたのが、うどん学校でした。
その後、ラーメン学校、蕎麦学校を始めたのも、全て、麺ビジネス繁盛支援会社が基礎になっています。


もし、この使命を明確にしていなかったら、
或いは明確にしたあと、しつこく社内で言い続けていなかったら、
今の当社は無かったことでしょう。
このことを通じて、私は卓越したサービスを企業文化にすることも、
時間がかかり、簡単ではないことを理解しています。
この状況を打破するには自分で売上をいち早くつくり、
人材を自ら選んで採用し、ひたすら働き続けるしかないのです。
それが、この小規模段階の経営者、社長のあり方なのです。

しかし、私が企業してから、現在に至るまでの過去を振り返ってみると、
一緒に苦労を共にして、ついてきてくれているスタッフ達にも、
「一緒にやって良かった、多くの人達の役に立ち、業界を変える事、
引いては日本を良くする、世界を良くするお手伝いが出来た」と、
言って貰える事ではないかと思っています。


小規模の段階では、一生懸命に働いて、売上をのばすことだけを考えましょう。
当社の場合、この規模は社員数、30名~40名で、売上規模は10億円未満でした。
麺ビジネスの場合は、この時代の売上は2億円前後です。
この時点までは、麺ビジネスのオーナーは、店舗でも先頭に立ち、
ずっと店舗に入りっぱなしが多いのが現状です。
しかし、これから更に事業を拡大しようとすれば、
現場の実務をいかに次の部下に任せられるかが課題です。
そして、ビジネス・オーナ―は徐々に現場を離れ、
本来の経営者としてなすべきことに集中しなければいけなくなります。

④ 中規模の時の在り方、
次のステージへ、経営者としての新たな境地へ脱皮する 集中は大きな力になります。

では次に規模が中規模になってきたときのビジネス・オーナーのあり方を見ていきましょう。
麺ビジネスの場合は、小規模から脱却し、だいたい売上が2億円以上になると中規模と言われています。
その頃からは、小規模の頃と比べて、ビジネス・オーナーの仕事も変化していきます。
現場技術の習熟から、徐々にマネッジメントの学びが重要な要素になってきます。
詰まり、ここで経営者としての脱皮が必要になりますが、多くの経営者は脱皮できずに、 この規模のままで一生を終える方が多いのが事実です。

⑥ 問題意識を持って経験を積む
経験と直観力は密接な関連があります。 経験の数が多ければ多いほど、直観力は高まります。
だだし、経験を積む場合でも、常に問題意識を持って経験を積むことが大切です。 経験の量と深さは、非常時に役立つのです。
まだ、完全に業務の負担がなくなりはしませんが、人材教育の成果も出てきて、 幹部候補の人材も現れる時期になります。
そしてやっと、マネジメントについて学ぶ時間も取れるようになります。
そのような頃になると、経理担当や採用担当を任せることができる部下たちが存在するでしょう。
そして、この頃の経営者の重要な仕事の1つが日々の経営状況を数値で理解することです。
ビジネス・オーナーは、ジェット旅客機の機長のような仕事になり、 機長は常に重要な3つの計器のチェックを怠らないのです。
1つ目は機体速度、2つ目は機体の向き、3つ目は機体高度、4つ目は残燃料が重要な指標です。
麺ビジネスであれば、日々の売上の変化、日々の人件費、仕入費用、毎月の利益の増減等々です。
そして、常にデータでの経営がビジネス・オーナーの重要な仕事のひとつになります。
更に、拡大再生産に向けての幹部の育成、社員教育、商品開発、品質レベルの強化、 サービス・レベルの強化、生産性向上、キャッシュフロー経営と片時の油断も出来ないのです。
そして、永く生き残るために避けられないのが、高い利益率とキャッシュの充実です。

⑤ 大規模の時の在り方 50年企業、100年企業を目指して

業種にもよりますが、麺ビジネスの場合は、売上10億円以上になると大規模といえるでしょう。
大規模になると、どのようなことが変化してくると思いますか。
経営者、社長のあり方はどのように変化していると思いますか。
先程の中規模までは、経営者、社長は自ら売上UPに貢献しています。
部下ができても100%任せるのではなく、自分自身も営業をしたり、採用をしたりしています。
しかし、大規模になると、いわゆる「監督」のような立ち位置に変化します。 右腕となる部下たちに仕事を任せられるようになります。

そして、コロナの時代も落ち着き、AI時代になり、ますます重要になるテーマは、デジタル化への取り組みです。
顧客ロイヤルテイの管理、メニュー管理、日々の売上管理、経営体質の管理、生産性の管理、 キャッシュフロー経営の管理、従業員ロイヤルテイの管理等々、新しいテーマが次々と増えてきます。
この頃の経営者は、次の世代に向けて、創業のDNA、自身のDNAを残す仕事にも取り組みます。
要するに、次世代を担う経営者の育成です。 これは時間のかかる、経営者にとっては永遠の課題です。

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