連載全3回のうち第2回目
作成:讃匠 麺研究センター
2.鍛え工程の本質とはの続きからです。麺の美味しさの中でも美味しさを演出している大部分は、食感です。柔らかくて、粘り強く、尖った前歯で噛んでも、 なかなか切れない様な粘り強いうどんが重要な要素です。ここでは、麺生地を何層に折り畳んで鍛えたかが、 非常に重要な要素になります。通常、足で麺生地を5回踏む場合、平たい麺生地を1回目に踏み鍛えます。この時は、1層の生地ですが、 平たく薄くなった麺生地を3層に重ねて折りたたむと3層になり、 2層に重ねて折りたたむと2層になります。通常、連続して、折り畳みながら、3層を連続して行うことは難しいので、 3回目、又は4回目以降は多分2層になります。すると、5回の足踏み、又はプレス作業後の麺生地は最大で、 36層、少ない場合でも16層の麺生地になり、この層の回数で、粘り強さが決まってくるのです。
鉄筋(グルテン)とコンクリート(デンプン)の表現をすると、分かり易いです。 ロール式製麺機は基本的にグルテンの網目状組織が出来にくい製法です。
グルテンの組織形成に十分な力を加えていないと、 グルテンの組織が十分に出来上がらないのです。 鉄筋コンクリートに例えれば、鉄筋の数が足りない状態です。 以前に建築の耐震偽装が大きな社会的な問題になりましたが、 鉄筋の数が足りないと、地震の時に建物が持たないのです。 うどんの場合は、こしの弱い、硬さの足りないうどんになります。 ですので、重要な事は、鍛え工程(プレス作業)は グルテンの組織が十分に出来る様に鍛えなければなりません。
鍛え工程が強すぎると、麺生地を破壊し、硬くてもろいうどんになりやすいのです。 組織が破壊する様な力は絶対に加えないことです。 これは、鍛え工程だけでなく、煉り工程も同じで、強い力を加えて煉り過ぎると、 麺生地の組織が破壊されて、元に戻らなくなります。 人間に例えれば、過労死と同じで、一旦、死んでしまうと2度と生き返られないのです。 麺生地の場合も同じで、組織の破壊された麺生地は2度と元に戻らないので、注意が必要です。 食味がコツンと硬いだけでなく、茹で時間が場合によっては2倍程度長くなり、 茹で延びが速くなります。
(参考)理想的な煉りによる美味しい麺の形状とは 美味しいうどんを見分けるのは簡単です。 食べてみる必要はありません。 茹でたうどんの麺を見るだけで簡単に分かります。 見分け方は下記の通りです。 前歯で噛んでみる、噛み切れない粘りの強いうどんほど良いのです。
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