連載全4回のうち第1回目
作成:讃匠 麺研究センター
うどん、蕎麦と違い、ラーメンには少加水麺から多加水麺まで、 麺のバラエテイが非常に幅広いのです。
それらの麺に合う様に、スープもとんこつから始まり、 醤油、味噌、坦々麺、更に醤油でも淡麗とか、家系とか、 さまざまなジャンルに分かれているのが、うどん蕎麦業界とは、全く異なり、 まさにラーメン業界は何でもありの業界なのです。
手打VS、手打ち式製麺機VSロール式製麺機
① 熟成
A.熟成の理解の大切さ
私は最初うどんの製麺機の製造販売から始まり、
次にラーメン、次に蕎麦と麺の種類の幅が広がりました。
その過程で、美味しい麺作りに欠かせない要素の最も重要な要素として、
熟成の大切さの理解でした。
うどんを始め、ラーメンの様に小麦粉を使う麺は必ず、
熟成工程が必須なのです。
熟成の4要素は次の通りです。
但し、うどんの場合が手打式多加水麺ですが、
ラーメンの場合はロール式もあり、
ロール式製麺の場合は、多加水から少加水迄あり、加水が多くなるほど、
熟成時間が長く必要になり、最も加水が多い手打ち式多加水麺の場合は、
うどんとほぼ同じです。
加水が少ない中加水、少加水麺ほど、熟成時間が短くなります。
◇熟成の4つの作用◇
a)水和作用
ミキシング工程:小麦粉の粒子に対して水分が水和する時間が必要。
b)脱気作用
熟成することによって麺生地に含まれている空気が
脱気されてかさの比重が重たくなる。
c)内部応力の緩和作用
熟成することによって
麺生地の中に溜まっているストレス(内部応力)を緩和する。
d)酵素の働きによる味の改善
澱粉分解酵素、蛋白分解酵素が澱粉とか蛋白を分解して
アミノ酸等に変化させる。
熟成の次に重要なものは、生地の成型ですが、
うどんの場合とラーメンが異なるのが、この工程で、
うどんは基本的に多加水製麺なので、
足踏みとか、プレスでの成型を兼ねた鍛え工程です。
ところが、ラーメンの場合の多加水製麺の場合は、
うどんと同じような手打ち式製麺機を使う場合と、
ロール式製麺機を使う場合の2通りがあります。
手打式製麺機を使う場合は、うどんの製法と基本的に同じです。
そして、ロール式製麺機の場合の中加水、少加水の製麺の成型工程では、
ロールを使った複合の工程があります。
複合の工程は、最初の粗麺帯を2枚合わせの工程を指し、
それを何回複合すれば、最も強靭で、
粘り強い生地が出来るかを当社で確認してみた結果、
2回複合が最も良いという結果になりました。
私が美味しい麺作りにおいて、熟成工程が欠かせないことを理解したのは、創業間もない頃、真打でうどん作りをしていた時でした。
私は、真打でうどん作りを始めた当初より、麺の美味しさを常に手打ちと比較したり、最高に美味しいと言われているうどん店のうどんと比較したりしていました。
さぬきうどんの本場、香川県には、昔から朝練り即打ちという、うどん作りの言い伝えがあり、うどん作りは早朝から始まり、早朝に練り、練った生地を足で踏んで鍛え、麺棒で圧延して、カットして麺線にして、すぐに茹でるという工程でした。
ところが、その工程通り、幾らうどんを作っても、本当に納得できるような美味しいうどんが出来ず、コツンと硬いうどんになりました。
そこで、なぜ、硬くなく、ソフト感があり、粘り強いうどんにならないのかと、書物を紐解いたり、試作を繰り返しているうちに、
練ってから、寝かしておくと、美味しいうどんになることを発見しました。
昔からの言い伝え通りではなく、練ったあとに、寝かす工程を取ると美味しいうどんが出来るのかを原因を突き止めたのです。
その結果、わかったことは、昔の小麦粉と現在の小麦粉の違いだったのです。
昔は、水車製粉で小麦粉を挽いていたので、全粒粉でしたが、現在の小麦粉は小麦の中心部分しか使っていない、色も白い、酵素活性の非常に低い小麦粉を使っているので、熟成時間を十分に取らないと美味しい麺にならないということだったのです。要するに、昔の小麦粉には、小麦全体を挽いていたので、不純物も多く、酵素活性が高く寝かせる必要がなかったのです。
従って、小麦粉を使う麺作りは、熟成と非常に密接な関係があり、現代の小麦粉で作られた麺は基本的に熟成工程が必要です。
② 複合
A. 複合って何?複合の役割とは?
ラーメンの製麺工程では、
麺生地と麺生地を合わせる複合工程というものがあります。
仕入れ麺の方は意識することは少ないかもしれませんが、
自家製麺を始めようとする方、すでに始めている方にとっては、
重要な工程です
。
では、複合にはどんな役割があるのでしょうか。