連載全5回のうち第5回目
作成:讃匠 麺研究センター
●スターバックスの事例
スターバックスはメニューへのこだわりがあります。
(アルコールは出さない、
ナイフとフォークを使わなければいけないフードは提供しない)
スターバックは基本的にコーヒーを主体にしたドリンク、
フード類を売っているカフェです。
ところが、スターバックスのコンセプトはコーヒーを売ることではないのです。
スターバックスのコンセプトは「第三の場所」の提供です。
第一の場所は自宅です。
第二の場所は、職場或いは学校です。
従って、第三の場所とは、コーヒーの良い香りのする自宅もない、
学校でもないくつろげる空間です。
その様な場所の提供がスターバックスのコンセプトであり、
スターバックスのビジネスの本質です。
だから、よく考えてみると、私もスターバックスは時々、使いますが、
決してコーヒーを飲むために行っている訳ではありません。
スターバックスへ行くのは、誰かと面談するための場所が欲しいときとか、
お客様との商談であったり、面接であったり、時間が余った時の本を読んだり、
PCで仕事をするための場所の確保のためです。
特に、電源コンセントを設けてあるので、長時間PCで仕事をする場合には、
非常に助かります。
店内にいるスターバックスを使っている人達を見回してみると、
コーヒーを飲むために来ている人はほとんどいません。
何かをするために、或いは、スターバックスのくつろいだ場所を
利用するために、来ているのです。
だから、スターバックスはコーヒーを売って儲けるビジネスではなく、
場所を貸して儲けているビジネスであったのです。
これがスターバックスのビジネスの本質、要するにコンセプトです。
そして、スターバックスはこのコンセプトの一貫性を持って守るために、
様々な工夫を行っています。
例えば、次の通りです。
a)店舗の雰囲気へのこだわり
b)出店と立地へのこだわり(プレミアム立地)
c)オペレーション形態へのこだわり(FCはやらない、直営店方式)
d)スタッフへのこだわり(人的資源への投資)
●一鶴の事例
私は本社での麺学校の場合、必ず、参加した生徒さん全員に丸亀の一鶴へ行き、鶏の足の焼き鳥を食べ、
ビールをガンガン飲んで、一鶴のビジネスの本質、即ち、コンセプトを理解することを宿題にしています。
今まで、私のこの宿題に正しい回答をした生徒さんは1人もいません。
香川県に大型店が6店、横浜、大阪、福岡等県外に4店、合計10店舗で年商が34億円あまりです。
最初、私は一鶴のメニューの少なさに感心し、メニュー数が多いお客さまを一鶴へご案内し、
メニュー数よりもメニューの商品力の高さが重要であると言い続けてきました。
ほとんどのお客さまは一鶴を見て、驚くのと同時に、いっぺんで納得します。
ある時に、私は一鶴のビジネスの本質は何かと深く考えていて、一鶴は一見して、
鶏の足の焼き鳥を売るようなビジネスに見えるかもしれないが、実際はどうではなく、
お客さまは、スパイシーな鶏の足の焼き鳥にかぶりつき、生ビールをガンガン飲んで、
ストレスを発散していることに気づいたのです。
現在の日本は、うつ病患者が国民100人に1人の割合でいて、ストレス社会だと言われています。
従って、多くの人たちは、ストレスを発散できる場所を探しているのです。
一鶴はそのようなお客さまの要望の上手に応えて、お客さまのストレス発散の場を作り、
鶏の足の焼き鳥は、その手段に過ぎないのです。
本日、お盆の13日に徳島からお客さまが来られ、徳島にも一鶴と同じような店が3件あり、
非常に繁盛していることを教えられました。
近々、その徳島の店にも行ってみるつもりです。
我々は、日々、色んな事をやらなければいけません。
麺ビジネス店の店内でも実に沢山の事をやらなければいけません。
ところが、麺生地の熟成温度をシビアに守る大切さを理解している方は、
非常に少ないでしょう。
当社は、麺の美味しさを守る為に、細かいところまで大変注意しています。
製麺をしているスタッフに対しても
注意深く、細かく指導します。
だし等についても同様です。
醤油等の調味料を合せた濃いだしの状態で、
沸騰状態に近い温度で何分以上も炊いてしまうと、
醤油の焦げ臭、焦げ味が残ってしまいます。
或いは、煮干、節等の材料を沢山使った上品なかけだしを、
沸騰近い温度まで上げてしまうと、魚の臭みがすぐに出てしまいます。
だし関係は、温度調節が非常に微妙なのです。
ところが、大抵の人は、この事を知らないで、
折角、良い材料を使っても、臭みの強いだしを作ってしまっています。
ちょっとした不注意が、良いだしをダメにしてしまいます。
だから、麺にしても、だしにしても、原理原則を理解していないと、
良さを引き出す事が出来ないのです。
当社では、うどん学校、蕎麦学校でだしの美味しさのメカニズムを
シッカリと教えています。
何故、そうなるのかを使いする事が重要です。
世の中が、益々複雑になるので、我々が知っておかなければいけない事は、
常に増え続けているのです。
だから、我々は学び続ける事が大変重要です。
片時の休みもなく、学び続ける事が我々にとって、
非常に重要な事を改めて、色んな事象が教えてくれます。