連載全3回のうち第1回目
作成:讃匠 麺研究センター
うどん、ラーメン、蕎麦等の麺作りの基本は、小麦粉等の粉の手練りから始まったのです。 人間の手は、非常に器用に出来ていて、手のひらに5本の指が付いていて、それぞれが自由に動き、 サルの様に、モノを掴むことが出来るのです。 このことが、人類が他の哺乳動物と異なり、大きく進化の歴史を歩む様になった原因と言われています。 例えば、手打ちうどんの場合は、手は小麦粉を練るだけでなく、麺生地の成型、鍛え工程、圧延工程、 カットに至るまで手作業で美味しいうどんを作る技法を作り上げてきたのです。 しかし、産業革命以降、全ての産業、ビジネスにおいて、生産性が問われる時代になり、 手作業では、誰でも気軽に食べられる価格での提供が難しくなり、必然的に今まで手で行われていた作業が 徐々に、機械に置き換わる様になったのです。 うどんの場合は、まず、ミキサーが発明され、ミキサーが手の延長として、新しいテクノロジーとして 麺市場に広まったのです。 従って、ミキサーはそれまで手で練っていた麺作りの工程のまず第一歩なのです。
それでは、一体、煉り作業の本質とは何でしょうか? 煉り作業とは、小麦粉の一粒、一粒に水分が偏らずに、均等に加水を含ませる作業です。 子育ての様に、「麺生地」はデリケートですから、いい子(麺生地)に育てるには、まずは最初(のしつけ)が最も肝心です。 生地を傷めると元にもどらないのは、麺生地作りは「子育て」と同じです。 うどん粉を手練りした場合は、慣れないと水分が多く、生地が塊になった部分と、そうでない粉っぽい部分が混在して、 均一に練られていないことが多いのです。 これでは、最高に美味しいうどんを作ることは難しいのです。それを避けるために、当社ではミキサー内で、小麦粉だけを先に、水を加える前に約1分間空煉りして、 小麦粉全体に空気を均一に含ませます。 その後、ある程度の早い回転数で、加水を均一に穴の開いた加水タンクを使って、小麦粉に水分を加えていきます。 加水は2回に分け、最初の加水は小麦粉重量の20%だけを加えます。 すると、加水量が十分ではないので、全体に加水の少ないパン粉状の麺生地がミキサー一杯に広がります。 加水が少ない状態で、小麦粉全体に均一に加水が行きわたった状態になります。 次に2回目の加水で、残った塩水を加水タンクに加えていくと、ミキサーの中では、 小麦粉の粒が小さい粒から徐々に大きい均一の塊に変化していきます。 これを当社では、攪拌造粒を呼んでいます。 要するに、加水が加わった小麦粉の粒が徐々に、攪拌されながら、大きな粒状に変化していく工程です。 当社の場合のミキシングの合計時間はたった5分で、これが麺生地を最も壊さないミキシング時間なのです。
製麺機はそれぞれのメーカーの人間が作ったものなので、 設計者の設計時の考えが色濃く反映されており、特徴と併せて、欠点があります。 特に欠点を理解しての製麺作業が重要なのです。 これは、車のような工業製品を運転する場合も全く同様です。 そして、古い車より、最近の車は進化して、過去の欠点が少なくなってきています。 製麺機も同様で、新しい機械ほど、古い欠点が修正され、麺の品質、使い勝手等、全てで進化して来ています。 特に、進化しているのは、麺質と生産性、安全性等です。 私は、この業界に最も長くいる人間の1人なので、他の製麺機メーカーの機械、 ミキサーの良いところ、欠点も全て知り抜いています。
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